シナプスにおける接着分子の機能
杉野英彦
大阪大学細胞生体工学センター

脳の科学(Brain Science)
特集:伝達物質の放出機構
Vol.23 p317-326
No4 Apr. 2001
星和書店:脳の科学
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0101/bn/

脳の科学,23:317326,2001 317(49)
特集 伝達物質の放出機構

シナプスにおける接着分子の機能
杉野英彦

抄録
脳には莫大な数の神経細胞が存在する。これらは複雑に多様化し,高度に組織化されている。こうした莫大な数の細胞の多様化と組織化は免疫細胞でも存在しており,以前より神経系と免疫系の類似性が指摘されている。免疫系細胞での多様化と組織化は,イムノグロブリン遺伝子群やT cell receptor遺伝子群のDNA再編成 (rearrangement)により始 まる。同様の多様化のメカニズムが脳で使 われているのならば,神経細胞同士での接着(神経回路網形成)において使われ ていると考えられる。最近 CNR(Cadherin-related-Neuronal Receptor)ファミリーの染色体上 におけるゲノム構造や相手方受容体等が明らかにされた。この結果 CNRファミリーは,免疫系細胞 でのイムノグロブリン遺伝子やTcell receptor遺伝子に相当するのではないかと推測された。脳の進化は哺乳類において著しく特に終脳部において顕著である。さらに大脳皮質領域の増大も著しくヒ トにおいては急激な進化が見られる。これらの領域においては神経回路網 のいっそうの多様化・ 組織化が必要と考えられる。 CNRはこうした領域の中で も大脳皮質,嗅球,海馬等のシナプスで強発現するカドヘリン様接着分子であることを考える時,多様化したシナプスの形成に関わる分子である可能性がさらに強く示唆される。
脳の科学 23:317-326, 2001

Key word: Cadherin, CNR(Cadherin-related-Neuronal Receptor), Fyn, Synapse, DNA rearrangement

Function of adhesion molecules in synaptic junction
大阪大学細胞生体工学センター
[〒 565-0871大阪府吹田市山田丘1-3]
Hidehiko Sugino: Division of Molecular Genetics, Institute for Molecular and Cellular Biology, Osaka University l-3 Yamadaoka, Suita, Osaka, 565-0871 Japan

はじめに
地球上の多くの動物種はその進化の過程において神経系,特 に中枢神経系の発達を増進させることで大きな飛躍をとげてきた。中でも哺乳類はその進化の早 い段階で大脳の大きさを増加させ始 めた。さらに人間は,類人猿(Austoralopitecs.Africa-nus)からわずか500万年足らずでその脳 (主に大脳)を500ccから2000 ccへと急激に増加させた。それに伴い大脳半球をしめるニューロンの間の認識・接着に必要とされる分子数の増加が必要とされたと考えられる。そうした進化に対応すべくそれらの分子をコーディングする設計図であるゲノム上では多くの神経細胞 に関連する遺伝子群の増幅が試された。なかでも神経細胞同士の接着に必要とされる遺伝子の増幅 は顕著なものであった と想像される。 またゲノム上での単純 な複製だけでは対応できないような場合,また単なる数の増幅だけでは対応できないような複雑な神経回路網 を形成することが必要 となった時には免疫系のような特殊なシステムを使い,個々の神経細胞がゲノム遺伝子の再編成のようなことを行っているのかもしれない。本稿ではシナプス間の神経細胞間接着分子,なかでもその構造がユニークなカドヘリンスーパーファミリー群の 1つ CNR(Cadherin-related Neuronal Receptor)を中心に概説する。

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